考察テーマ2:シャア三(四)部作について。

  その七、四部作の所以、閃光のハサウェイに関する考察

 どうしてシャア四部作なのか?前項までを読んでいただくと
ファースト・ゼータ・逆シャアの3作品でシャア3部作となるのは理解していただけると思う。
ダブルゼータはある意味ゼータに吸収されることも、ここまで読んでもらえれば納得できると思う。
では、どうして閃光のハサウェイを入れて、四部作とするのか?
 閃光のハサウェイは逆襲のシャア公開後一年で出版されている。
富野監督は逆シャアで全てを語り尽くさなかったのか、何を言い残したのか?
という疑問が沸くのは当然だし、内容的にも逆シャアの完結編と思えるのだが・・・。
いかがなものだろうか?
 私としては、シャアの意思を引き継いだハサウェイの物語=(シャアは出てこないが)シャアシリーズ完結編
と捉えているのだが。




閃光のハサウェイを読み終えて
(98年、社会人一年目のゴールデンウィークに読み返した)

 閃光のハサウェイは、どういう意図で書かれたのだろうか?。ハサウェイが処刑される、
そしてマフティーの正体がハサウェイとブライトのみならず、世間にも知れてしまうとは。
この悲しさは、Ζ以上のものがあるのかも知れない。だから、逆に映像化されないのかも知れない。

 「閃光」を初めて読んだのは、出た当時で、中学生だった。だから、抱いていたイメージは、
ハイジャックが行われた青い空とオーストラリア大陸という青いイメージだった。
そして、マフティーことハサウェイは、ブライトの前で処刑される、というイメージ。
ギギのイメージは、あまり変わらなかったが、ケネスのイメージが全然違った。
ケネスはもっと歳喰っていて、体型的にもランバ・ラル的イメージがあったものだ。

 ところが、二十歳を過ぎた俺がそこに見た物は、もっと悲惨な物語であった。
一巻こそ、血なまぐささがなく、一気に読んだものだが、それ以降は、色々と駆け引きがあったり、
純粋ガンダム系を考える上で結構重要になる感じがした。

 実際、シャアの絡みでガンダム系を考えると、逆シャアで終わりなのではなく、
全ての意味で閃光に話が受け継がれている。  また、F91とそれまでのガンダムが明らかに違う点が、記述されている点にも注目したい。
それは、鎮座したままのΞガンダムを見てブライトが言ったもの。
「歴代のガンダムは、地球連邦軍にいても、いつも反骨の精神をもった者がのっていたな。」と。
つまり、明らかに、コスモ・バビロニア主義に反骨してF91に乗った訳ではいシーブックは、
それまでのパイロットとは違うわけだ。

 ところで、今思いついた、ハサウェイの悲劇の物語。何故ハサウェイはガンダムに乗りつつも、敗れたか。
今までのパイロット達と何が違ったのだろうか?。ハサウェイは初陣をジェガンで果たしている。
この点も他のパイロットとは明らかに違う。いわば、アムロがGMでカミーユがネモで初陣をしたようなものだ。
だが、こんな事は関係ない。問題は、ハサウェイが白い戦艦のエースパイロットになり得なかったからだ。
それは彼自身の境遇による。まず、第一にブライトの息子であること。ブライトは数々の部下の死を
くぐり抜けてきたわけだから、進んで息子をパイロットにするわけがいない。
現に、逆シャアでのハサウェイの行動にブライトは怒りを表している。パイロットどころか、
地球連邦軍、政府の実体を嫌というほど見てきたわけだから、連邦関係の仕事には就かせないはずだ。
ハサウェイにしても、たとえ連邦のパイロットになったところで、ブライトのもとにはいられない、
いないはずだ。この点が他のパイロット達と違う。
 また、もう一つ大きな違いがある。それは、偉大なる二人のニュータイプを見てきたこと。
アムロにシャア。ハサウェイの行動は二人を足して2で割ったようなものだ。アムロのように必然的に
闘うようになったわけでもなく、シャアのように大がかりな革命を起こそうとしたわけでもない。
連邦政府高官の粛正。ただこれだけ。方法論の問題はあるにしても。ニュータイプの世を作ろうとする、
アムロ、シャアとは少し違うのだろうか?
 ただ、思想的にアムロよりもシャアの影響を強く受けているのかと思えば、マフティーの標準モビルスーツ
がメッサーというジオン系の流れを受けているのに、自身がΞガンダムという、νガンダムの後続機に乗っている。
アムロと似ている点を言えば、クエスを殺してしまったこと。ララァに引きずられているアムロとダブル。


 この物語りで、一番の被害を被ったのは、ハサウェイでも、ギギでも、ケネスでもなく、もちろん連邦政府官僚でもなく、
それは、ブライト・ノアとミライ・ノア夫妻だったのかも知れない。これは富野さんが意識的にそうしたものなのだろうか?
ホワイトベースのクルーで、唯一のまっとうな生き方をしていたから?



閃光のハサウェイ気になるセリフ達
1.
 ケネス「・・・ノア艦長の場合、なぜ、退職願が受理されないか、ご存じですか?」
 ブライト「いや・・・?」
 ケネス「こういう噂があります。艦長は、ニュータイプの統轄なさる舞台にいらっしゃたから、
     なんというか、連邦政府の人質みたいなものだったんですよ」
 ブライト「人質?自分がですか?」
 ケネス「まあ、表現は悪いんですがね、アムロ・レイやらカミーユ・ビダンですか?
     そういうニュータイプといわれる突出したパイロットを部下にして、あつかえた方です。
     つまりね、地球連邦軍の内部に、ニュータイプの再来とか反逆があった場合、
     盾にするという意味で、拘束していたんですよ。そういう考えがあったとききますな」

2.
 鎮座しているΞガンダムの期待の前に立って。ブライトとメカニックマン。


「・・・」
ガンダムの名称を受け継ぐだけの容姿は、その機体にみてとれたが、それでも、かつてのガンダムにくらべれば、
どこかいかつすぎているように思えた。
「どこで製造されたんだ?」
ブライトは、一人だけつれてきたメカニック・マンにきいた。
「キルケー部隊の報告では、不明だということです」物証がなく、製造工場をしめすものは、一切ないということです」
「フン・・・、このつくりは、アナハイム・エレクトロニクスだよ」
ブライトは、機体の印象がそう断定できた。

「フム・・・ガンダムらしいが、このなんというかな、マシーンとしては、複雑になっていく一方なのが、気にいらんな」
「でも、艦長。不穏分子がつかうモビルスーツに、ガンダムという名称をつかうなんて、許せないでしょう?」
ブライトは、シートの下から抜け出し、ガンダムの煤まみれの顔を見上げて、
「そうでもないさ。歴代のガンダムは、地球連邦軍にいても、いつも反骨の精神をもった者がのっていたな。
そして、ガンダムの最後は、いつもこうだ。首がなくなったり、機体が焼かれたり、バラバラになったり・・・。
しかし、反骨精神は、ガンダムがなくなったあとでも、健在だったものだ」


(機体が焼かれたりって、νガンダムのこと?、反骨精神は、ガンダムがなくなったあとでも、
健在だったものだって、ハサウェイのこと?)


3.
ギギとケネス。ニホンに向かう飛行機の中で。
「大佐はどうするの?」
「そうだな・・・今の連邦政府がなくなって新しい何かができたって、また組織の悪癖も出るだろうしな・・・
そのために、次のマフティーをつくる用意でもするか?」
「次のマフティー?」
「ああ、百年後かも知れないが、そのために、シャア・アズナブルとかハサウェイ、アムロでもいいな。
そんなのが、復活するような組織をつくってみたいな」


ここで富野さんは「閃光のハサウェイ」が逆シャアの完結編、
あるいはハサウェイはシャアの意思を受け継いでいると言ってないか?
”シャア・アズナブルとかハサウェイ、アムロでもいいな”とアムロが一番最後に来ているところが、
そういっていると思うのだが・・・。


やっぱりどう考えても、「閃光のハサウェイ」まで読み解かねば、
いわゆる”ガンダム”は理解できない。(01.05.26記す)



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   その一、Ζの主役はシャアか?
   その二、どこから考えるべきか初代ガンダム
   その三、初代からΖへ
   その四、Ζのシャアには女がいないのはなぜか?
   その五、Ζに関してその他の数々の疑問
   その六、その他TVシリーズに冠する数々の疑問


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